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コラム/てく。/ワールド&ワールド第1話:気候帯からみる作物

このコラム「ワールド&ワールド」では、PLのリアル世界の事象を織り交ぜつつ、
エンファータなどのファンタジー世界を紐解いていきます。

第一回は「気候帯から見る作物」のお話。始まり始まりー。

まずは気候帯のお勉強 Edit

気候帯というのは、「熱帯」「乾燥帯」「温帯」「亜寒帯」「寒帯」という、
気温と降雨量でその土地の気候を区分するものです。
学校の地理の授業で学びましたよねっ。
でも、また学び直したい人は、Wikipedia/ケッペンの気候区分を参考にしてください。

それぞれの気候帯は気温変化・降雨パターンなどでさらに細分化されます。
なので、熱帯でも、熱帯雨林気候、熱帯モンスーン気候、熱帯サバナ気候などにわかれます。
ちなみに日本は温帯に属し、温帯湿潤気候に分類されてます。

さて、この気候帯がファンタジー世界に何の関係があるのでしょう?
「気候帯が植物の植生を決め、つまりその土地の文化・風習を決める」のです。

常夏の土地だったら厚着はしないだろう、とか
砂漠の土地だったらアラブ人のような装いになるだろう、とか
寒帯の土地だったらロシア人みたいな厚着になって強い酒を飲んでるんだろう、とか
気候によって服装が変わるし、つまり風習も変わるというのは、
みんな理解してると思います。

でも、もう一つ重要なことがあって ―― 気候によって作物も変わる、という事実。
作物が変われば、普段食べるものが変わります。
あなたのPCが食べてるパスタは実は(その土地には)存在しないかもしれないのですっ!
ドキドキですねッ。

ということで、気候帯からみる作物の植生、特にレングラートでのお話をご紹介して行きましょう。

熱帯で「存在しないもの」 Edit

エンファータ世界のレングラート地方は、常夏だと記載されています。つまり、熱帯性気候ですね。
熱帯性気候といっても、ケッペンの気候区分で細かく分けると色々とあるのですが、
ここは大雑把に「熱帯」でまとめちゃいましょう。

熱帯性気候は、1年を通してあまり気温変化がなく、
雨季と乾季にわかれ、スコールが起こりやすい、という特徴があります。

熱帯気候の土地は、降雨量が大きいので、大ジャングルや大河川ができます。
有名なのはアマゾン川流域、東南アジアのメコン川流域などでしょうか。
海岸沿いにはマングローブ林などが出来るのが特徴です。
生態系豊かで、植物の種類も豊富で、ヤシなどが生える気候です。
レングラート地方に合致してますね。

作物栽培も盛んで、雨季の豊富な水資源と通年を通して寒暖差が少ないことを活かし、様々な作物が栽培されています。
リアル地球でも、熱帯性気候の土地で色んなものが栽培されてます。
稲、トウモロコシ、バナナ、キャッサバ、タロイモ、ヤムイモ、ヤシ、カカオ、
その他熱帯性作物(ナツメヤシ、パンノキ)など。

―― なにか、ひとつふたつ大事なものが欠けてる気がしますね?

そう、「小麦」がないのです!
ついでに「ブドウ」もない!

熱帯にある作物、ない作物 Edit

さて、そこで、リアル地球の主要作物のうち、
熱帯地方で育てられる/育てられないものはどんなのがあるか、
見てみましょう。

作物名適した気候帯補足
小麦・大麦亜寒帯~温帯メソポタミアで栽培化された植物。世界三大穀物。実った後に多量の水分を吸うと発芽してしまう。パン、パスタなど、おなじみの主食の原材料
お米温帯~熱帯中国南部原産。世界三大穀物。熱帯で栽培されているのは、日本のお米とは違うインディカ米。栽培方法は殆ど変わらず。ライスヌードルなどもある
トウモロコシ温帯~熱帯熱帯の中南米で栽培化された植物。世界三大穀物。油や、トルティーヤなどのパンの原料、チチャなどのお酒の原料ともなる。ヌードルにするのは極めて難しい
ジャガイモ亜寒帯南米アンデス山脈の高地が原産。亜寒帯に適した植物で、寒冷な土地で栽培される。小麦・米・トウモロコシに次ぐ世界四大作物。用途は様々
キャッサバ熱帯実はジャガイモの次に生産量が多い熱帯のイモ。茎はタピオカの原料になる。栽培が簡単
サツマイモ亜熱帯~熱帯南米熱帯原産。ヨーロッパには15世紀に伝わったが、ニュージーランドには10世紀に伝わっているという謎の多い植物.
大豆寒帯~亜寒帯中国東北部・シベリア原産。日本ではお馴染みだが、ヨーロッパやアメリカに入ってきたのは18~19世紀と、極めて遅い植物。
落花生亜熱帯~熱帯南米原産。大航海時代に東南アジアを経由して、18世紀に日本に入った作物
インゲン豆亜寒帯中南米原産だけれど寒冷な気候を好む植物。小麦・米・トウモロコシと栄養の相性が良い。日本では北海道が生産量の90%を占める
ソラマメ温帯~亜熱帯地中海、西南アジア原産。豆板醤などの原料にもなる
アブラヤシ熱帯世界で最も生産されている油「パーム油」の原料
オリーブ地中海性気候ご存知オリーブオイルの原料。温帯地中海性気候でしか育たないと言う難敵
ワタ亜熱帯~熱帯木綿の原料。種子から油が取れる(綿実油)
ココヤシ亜熱帯~熱帯実はご存知「ココナッツ」。繊維をとったり材木を活用したりと、実に幅広い用途の植物
ナツメヤシ亜熱帯~熱帯干した実は「デーツ」と呼ばれる。極めて栄養価が高く、主食として利用もされる。とても甘いので砂糖代わりにも使われる
サトウキビ亜熱帯~熱帯ご存知「砂糖」の原料。
ブドウ温帯~亜熱帯コーカサス地方原産。ワインの原料でお馴染み。たいていの種類は乾燥・寒冷が好き
リンゴ亜寒帯~温帯青森が有名な産地で知られてるとおり、寒冷な気候を好みます
トマト亜寒帯~温帯アンデスの山脈原産。暑すぎるのも寒すぎるのも嫌いだし、水が多すぎるのも弱い作物

こうして見ると、「小麦・大麦」「ジャガイモ」「オリーブ」「ブドウ」「リンゴ」「トマト」と、
ヨーロッパ系ファンタジー世界にとって大事な作物の大半が、
熱帯気候では生育が難しいのがわかりますね。

存在しない食べ物 Edit

それにしても、慣れ親しんだ小麦、ジャガイモ、オリーブなどの作物がないというのは、
生活に大変な影響を与えます。

小麦がないということは、パンがない!
大麦が無いということは、エールやビールがない!
ブドウがないということは、ワインがない!

「親父ぃー、パンくれよー、エールかワイン飲ませろー」なんてロールができなくなります!

そしてトマトもないのでは、パスタも味気ない!(そもそもパスタがない!)

…それにしても、熱帯気候のレングラートの人たちは一体何を食べてるのでしょう。
まさか日本人と同じようにお米を食べてるのでしょうか。
そうなっちゃうと、舞台と風習が一気に和風・東南アジア風になっちゃいますね。

さて、次は、そんな所でどうやってパンを食べるか、
それをテーマにしましょう。

第2話をお楽しみに!


第2話:されど我はパンを喰らう Next
 
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